紙の書籍(ペーパーバック)
A5判(148×210mm)・ペーパーバック · 226ページ
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基本情報
| 著者 | ロシア ラダ・テレンチェワ |
|---|---|
| カテゴリー | 海洋冒険 / 冒険 |
| 本の言語 | 日本語 |
| 発売日 | 2026年11月2日 |
| ページ数 | 226ページ |
| 商品番号 | TB-W0013-JA |
| 読む時間の目安 | 約5時間40分(1分に360字で読んだ場合) |
| 印刷用PDF | A5判・本文PDFと表紙PDF(塗り足しつき:3mm/3.175mm の2種類がダウンロード可能です。) · 226ページ |
この本のカテゴリー
本の紹介
海の物語は好きだが、大砲の音や怒鳴り声にはもう少し疲れた。そんな人のための航海の物語だ。神話の時代、一隻の探検船が、北の霧と氷を抜ける安全な航路のただ一枚の海図を持って帰ってくる。荒れた北の海を、黒い帆の船が四隻で追ってくる。やがて風がやむと、逃げきれるかどうかは、片目の見えない年老いた航海士にかかってくる。彼女は答えを言わず、問いを投げかけ、海に答えさせる人だ。
風が眠り、追う者も追われる者も同じ鏡のような海に浮かぶとき、帰り道を知る方法は、耳を澄ますことだけだ。
あなたは探検船アオサギ号でいちばん若い乗り手だ。この船は、はるか北の霧と氷を抜ける安全な航路を海図にしたばかりである。港に戻った夜、鉄の岸の領主が海図を奪うために黒い帆の船を四隻よこしたという知らせが届く。年老いた航海士イングリスは、明かりを一つもともさずに、乗組員を闇の海へ連れ出す。
航海は、序章と終章にはさまれた十六の教えとして語られる。どの章も、だれもが信じていること、たとえば海では明かりがなければ見えない、追いかけっこは速い船が勝つ、北の海で風が眠ることはない、といった思いこみから始まり、海がほんとうのことを見せていく。
やがて風がやむ。追う者と追われる者が同じ凪の海に止まり、逃げる道は、櫂と潮の流れと星と霧と氷と忍耐の、長く静かな勝負に変わる。戦う相手のいない海で、小さな乗組員たちは、だれを信じればよいかを学んでいく。
アオサギ号の上で、あなたはこんなことを身につける
- 遠い嵐から届く長いうねりを読み、灰色に閉ざされた空の下でも針路を保つ
- 平らな凪の海の中を流れる、ゆるやかな川を見つける
- 動かない星の高さから、どれほど北へ来たかを知る
- おびえた乗組員を、大きな声ではなく落ち着いた声でまとめる
目次
- 老いた航海士と眠る風
- この本を書いた理由
- 序章 灯
- 夕暮れに、二本の柱の上で港の灯りがともされる
- 盤の上の石の遊びが、勝負のつかないまま残される
- 交易船が南東からの知らせを運んでくる
- アスケルとイングリスが、二人のあいだで夜をはかりにかける
- 古い歌が言うこと
- 海図の印
- アオサギ号の灯りが、いっせいに消える
- 耳を澄ます者には、岩がそれぞれ違う声で語りかける
- イングリスは、聞こえるものと感じるものによって船を導く
- 島が闇のなかへと遠ざかっていく
- 第1課 闇
- 目はゆっくりと、しぶしぶ闇を覚えていく
- イングリスは、物のかたわらを見ることを教える
- 古い歌が言うこと
- 砕ける水の白さが、岩礁のありかを示す
- 岩に寄せる波の音は、遠くまで届く声を持っている
- 目に見えないものを、竜骨が感じとる
- 夜明けが来ても、南東の海には何もない
- 海図の印
- 乗組員たちは、ひとつの灯りもなしに働くことを覚える
- 南西の夕空が、白っぽく筋を引いていく
- 第2課 嵐
- 午前の半ば、南西から風が立ちのぼる
- アスケルは船をいちばん近い港へ向ける
- イングリスは、嵐のときに岩がどこにあるかを問う
- 古い歌が言うこと
- 帆は細い布の帯にまで下ろされる
- アオサギ号は強風に追われて外の海へ走る
- 嵐のさなか、星ひとつない夜が降りてくる
- 嵐はアオサギ号を、あらゆる目から隠す
- 海図の印
- 閉ざされた空の下で、強風は吹き尽きる
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- 第3課 うねり
- 灰色の雲が、端から端まで海を閉ざす
- 竜骨の下で、二つの海が交差して走る
- 古い歌が言うこと
- イングリスは、ゆっくりとした呼吸で長いうねりを数える
- 風が向きを変え、船もそれとともに向きを変える
- イングリスは目を覚まし、船がおかしいことを知る
- 太陽石は、雲の向こうに何も見つけない
- はるか北西から、新しいうねりが届く
- 海図の印
- 夕べの縁を、最初の鳥たちが過ぎていく
- 第4課 鳥
- 雲が割れ、海は翼でいっぱいになる
- 最初のカモメを見て、ブランが陸だと叫ぶ
- 一生を海の上で眠って過ごす鳥もいる
- 古い歌が言うこと
- 正午の太陽が、うねりが真実を告げていたことを証す
- 一羽のワタリガラスが、柳の籠から放たれる
- 海図の印
- アスケルは、からっぽの島をめざしたがる
- 夕べの鳥たちは、西のねぐらへ帰っていく
- 夕闇の縁に、ウェンナが何かを見る
- 第5課 帆
- 四つの黒い帆が、南東の低いところに立つ
- 網が引き絞られて、一本の列になる
- 古い歌が言うこと
- アスケルは櫂をすべて水に入れたがる
- イングリスは石を並べて、追跡を示してみせる
- 追跡とは、位置を争う長い勝負である
- 長い午後のあいだに、狼号が少しずつ迫る
- 海図の印
- 前方の海が、冷たく、暗くなっていく
- 霧の壁が、舳先の向こうに白く立ちのぼる
- 第6課 霧
- 灰色の壁が、船尾の後ろで閉ざされる
- 古い歌が言うこと
- 測鉛は、しぶきも立てずに沈んでいく
- 船のあらゆる音を、しまいこまなければならない
- 灰色のどこかで、太鼓が鳴る
- 狼号は、遠矢の届くほどの距離を通り過ぎる
- 狩人たちが耳を澄ますあいだに、イングリスは船の向きを変える
- 海図の印
- 朝は、より淡い灰色としてやって来る
- 帆の息づかいが、ゆっくりになりはじめる
- 第7課 凪
- 海は磨いた青銅のように平らに横たわる
- 古い歌が言うこと
- ウェンナが、海の縁に四つの黒い帆を見つける
- 狩人たちが座っているあいだに、アスケルは漕ぎたがる
- 恐れが冷たい水のように船じゅうに広がっていく
- 乗組員たちが見守るなか、イングリスはゆっくりと一局を打つ
- 目を覚ますと、彼女は手の空いた者すべてに仕事を与える
- 海図の印
- うねりは、去ってしまった風を覚えている
- ガラスのような海の上を、あらゆる音が渡っていく
- 第8課 櫂
- ブランは槌のような拍子をとる
- 古い歌が言うこと
- 正午には、手が言うことをきかなくなりはじめる
- イングリスはブランに太鼓を数えさせる
- 半分の漕ぎ座が漕ぎ、半分の漕ぎ座が眠る
- 海図の印
- リーセは櫂の柄に羊毛を巻く
- 古い歌が、拍子を数える声になる
- 十二日目、差は保たれる
- 海藻が一本の線になって水の上に横たわる
- 第9課 海流
- 二本の羽根が線の両側に置かれる
- 古い歌が言うこと
- 水の色がその秘密を明かす
- アスケルは目に見えない川を疑う
- アオサギ号は青い水へと渡る
- 海図の印
- 黒い船は緑の水の中を漕ぎ続ける
- ブランは川とともに漕ぐことを学ぶ
- イングリスは船を継ぎ目の内側に保つ
- 何日かぶりに空が晴れる
- 第10課 星
- 十五日目は明るく静かだ
- 古い歌が言うこと
- イングリスは板と結び目のある紐を取り出す
- 動かない星は故郷よりも高く立つ
- 腕を伸ばして板を星にあてがう
- 紐は彼女の最後の結び目の先にある
- 海図の印
- アスケルは同じ空に狩人が何を見るのかと尋ねる
- 故郷では沈む星が、ここでは沈まずにめぐる
- ダンが樽の数を持って船尾へ来る
- 第11課 水
- イングリスは樽のことを乗組員にありのまま話す
- 古い歌が言うこと
- ダンは一日に一つ結び目を結ぶ
- ブランは海の水を器にすくう
- 海図の印
- 公平な分け前は皆の見えるところで量られる
- 黒い帆柱がもう一度水平線に現れる
- リーセは空を受けとめるために帆を広げる
- 十九日目のあいだじゅう、風のない霧雨が降る
- 暗闇の中、船のまわりで大きな息の音がする
- 第12課 鯨
- 暗闇の中の息は海の音ではなかった
- 古い歌が言うこと
- ブランは櫂に手を伸ばし、イングリスがそれを止める
- 灰色の背中が竜骨の下を通り過ぎる
- 鯨は食べているのであって、船を狩っているのではない
- 線の片側には冷たい水がある
- イングリスはもう一度古い一節を読み解く
- 海図の印
- 黒い帆はまだ見えるか見えないかのところにある
- 流れのへりが道になる
- 第13課 氷
- 最初の氷のかけらは羊ほどの大きさもない
- 古い歌が言うこと
- アスケルは船を引き返させるべきだと言う
- 雲の下の白い光が道を示す
- 古い空気が抜けていくとき、氷は歌う
- リーセは帆柱を甲板に倒す
- 小舟が通り道を探しにやって来る
- 高い氷は塩のない水をくれる
- 海図の印
- 一日の終わりに寒さがやって来る
- 第14課 迷い
- 夜明けに、氷を越えて声が届く
- 古い歌が言うこと
- ブランは漕ぎ座の上に立って話す
- アスケルは誰よりも大きな声で叫ぶ
- イングリスは叫び声が疲れ果てるのを待つ
- イングリスがあまりに静かに話すので、皆は身を乗り出す
- 海図の印
- 船の上の一人一人が杯に石を落とす
- アスケルはどうやったのかと尋ねる
- 氷から霧が立ちのぼりはじめる
- 第15課 待つこと
- 霧は羊毛のように氷の上に横たわる
- 古い歌が言うこと
- 乗組員はアオサギ号を石のように静かにする
- 白い霧の中から狼号の太鼓が戻ってくる
- 狼号が、ひらけた通り道をたどってやって来る
- 霧が十の息のあいだだけ開く
- モルヴァンは開いた手を上げ、そして下ろす
- 海図の印
- イングリスは、待つことを誰に教わったかを話す
- ウェンナは南を見るために高い氷に登る
- 冷たい空気のひと息が霜に触れる
- 第16課 風
- 乗組員は午前のあいだずっと南西を見張る
- 古い歌が言うこと
- 北東から、暗いまだらがガラスの上を歩いてくる
- リーセとブランがもう一度帆柱を立てる
- アオサギ号は櫂で氷を離れる
- 帆が風をはらみ、船首の下で水が話しはじめる
- 海図の印
- 星は夜ごとに少しずつ低く沈む
- 最後のワタリガラスが陸のほうへ飛んでいく
- 測鉛が故郷の砂をつけて上がってくる
- 終章 港
- 波止場沿いの灯りが夜明けの中から現れる
- 古い歌が言うこと
- イングリスはアオサギ号を港口から入れる
- 灰色の光の中、人々が波止場へ駆け下りてくる
- 灯の評議会が海図を受け取る
- イングリスは、この航海が最後だったと言う
- アスケルは船まで一緒に歩いていく
- 海図の印
- イングリスは海図と航海日誌を手渡す
- 石の遊びは冬じゅう続く
- あとがき
- 奥付
出版社より
いちばん恐ろしいのが凪である、海の追跡の物語。
多くの海の物語が駆け足で通りすぎる静かな時間で組み立てられた冒険だ。明かりのない夜の船出、霧の中で敵の太鼓がすぐそばを通りすぎる一時間、水樽が少しずつ軽くなっていく鏡のような海の日々。物語は「あなた」に語りかけ、読む人はイングリスの隣で測鉛の綱を握り、櫂の数を数える。追跡のゆっくりとした緊張は、最後までゆるまない。
イングリスは忘れがたい主人公だ。岸壁のだれからも見くびられ、そのだれよりも賢い。世界は神話でも、操船の知恵はほんものであり、一つの教えを読み終えるたびに、海の見え方が、そしてたぶん自分の思いこみの見え方も、少し変わる。
評価のポイント
- 荒れた北の海をわたる長い追跡を、戦いの場面なしに描く
- 耳と手ざわりと忍耐で海を読む、年老いた航海士
- だれもが信じていることを一つずつくつがえす、十六の教え
- 神話の世界の中の、うねり・海流・星・霧・氷のほんものの航海術
- 「あなた」に語りかける文で、見習いとして航海を生きる
こんな人におすすめ
- 海の冒険や、神話の時代を舞台にした物語が好きな十代と大人
- 忍耐が勝つ、静かで思慮深い物語を読みたい人
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